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当ブログをご覧いただきありがとうございます。相続税専門の税理士の岡田隆行(okatakatax.com)です。
金融機関の取引履歴は過去10年分までのものは復元できます。では、それよりも前のお金のながれのことが、税務調査の争点となった場合にはどのように処理がされるのでしょうか。
相続人の記憶頼み
金融機関の取引履歴が存在する過去10年の間に、被相続人名義の口座から相続人など名義の口座へ預貯金の移動があった場合、税務調査でその移動の理由を質問されたら、何らかの説明しなければなりません。生活費だったのか、過去の借金の返済だったのか、贈与なのか、預けていたのか・・お金が移動しているからにはそこに何らかの理由があるはずだからです。
では、10年以上前のお金のながれはどうでしょうか。
たとえば、相続開始時点で被相続人の奥さん名義で多額の金融資産があることは分かっている。ただ、その金融資産は運用を金融機関へ一任する口座で、過去10年の間に他から資金が入って来た形跡はありません。
また、奥さんは高校を卒業後、実家の家事手伝いを経て、夫と結婚して以降ずっと専業主婦だった上、実の両親からは相続財産は取得していない。
その多額の金融資産の、もとの出所はどこなのか、税務署としては夫である被相続人の財産の一部が奥さん名義になったものだろう、それ以外には出所がないでしょうと追求してくる。
奥さんは、もう高齢で10年以上も前のお金のながれの記憶は曖昧だが、夫以外にお金の出所は思い出せないから、夫のものかも知れないですねと答える。
さらに、その奥さん名義の預金は被相続人である夫が管理していたとなれば、これは奥さんの名義にはなっていますが、旦那さんに帰属する財産ですねと質問応答記録(聴取録)をとられて、奥さん名義の金融資産は相続財産の申告漏れとして追徴課税されるというながれになります。
納税者である奥さん側にも、税務署当局側にも、奥さん名義の金融資産の出所がどこかという証拠資料はなく、課税の根拠が奥さんの記憶のみに拠っているということになります。
ところが、そのお金の出所が実際には被相続人である夫の両親だとしたらどうでしょう。夫の相続開始よりも以前、現在から20年前に亡くなった夫の両親が、かわいい嫁(奥さん)の名義で蓄財してくれたいた金融資産であり、その両親が亡くなる前に奥さんへ贈与されていたとしたら。
その当時に夫の両親と奥さんとの間に「あげます、もらいます」の贈与契約は成立していたものの、その管理は今回の被相続人である夫が続けていたものだったら。
そうなれば、真実は奥さん名義の金融資産の出所は、亡くなった夫の両親であり管理だけ夫がしていたということになります。
それらの真実の事実関係が奥さんの記憶から抜け落ちている、ということも無きにしも非ずのことでしょう。
人の記憶はあいまい
人の記憶は非常に曖昧なものなのだそうです。
人の記憶は、デジタルデータのようにフォルダにファイルが保管されていて、それを読み込めば過去の記録そのものが再現されるのではありません。脳は過去の記憶を思い出そうとする度に、断片的な記憶をつなぎあわせて再構成します。同じ場所で同じ体験をした複数の人の記憶に食い違いがあることはよくある話です。
まして高齢になればなるほど記憶はより曖昧になり、完全に忘れてしまっていることもあるでしょう。
「他にお金の出所はない(はずだ)から、夫の財産かも知れない」と言ってしうと税金をかけられてしまうのであれば、「記憶が曖昧で分かりません」と言ったらどうなるのでしょうか。
もしくは被相続人の奥さんは健在だけれど、認知症が進行していて税務署の質問に答えられる状況になければどうなるのか。
それは「夫の財産かも知れない」言った者に課税される、正直者が馬鹿を見る結果になります。これが適正公平な課税だ、とはいえませんよね。
【きょうのスイーツ】
コメダ珈琲店のクリームコーヒーです。アイスコーヒーにソフトクリームが乗っかっています。やはりソフトクリームにはコーンが一番ですが、クリームコーヒーもたまにはアリです。