正直者が損をする? 旧い保険契約の保険金の出捐者
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相続税専門の税理士の岡田隆行(okatakatax.com)です。 ☞ 仕事を依頼する
相続税の税務調査案件の事例です。旧い保険契約の保険料を被相続人が負担していた(のかも知れない)話です。
☞ 10年以上前に契約締結された生命保険契約の権利 税務調査で指摘を受けたら

収入がないのが証拠
相続人である子を契約者とする生命保険契約が20年以上前に締結されていました。保険料は1000万円超の一時払いの養老保険契約です。
税務当局の主張によると、その相続人には契約締結当時において、収入からみてそれだけの保険料を負担する資力はなかったと認められるから、保険料は(今回の相続の)被相続人が出捐(しゅつえん/お金を出した)に違いない。だから、その保険契約を被相続人の財産として課税財産に含めるべきだということでした。
さらに相続人がその職業柄、生命保険契約やその課税関係に精通していたと認められるにもかかわらず、相続財産に含めていないことが重加算税の対象になる可能性があるとのことです。
これはこれは、疑問がどんどん湧いてきます。
事実関係としては、保険契約当時に相続人に保険料に見あう収入がなかったことと、保険契約が締結されて保険料が一時に払い込まれていることです。
当然のことながら、保険契約当時にその相続人に収入がなかったからといって、被相続人がその保険料を負担したという証拠にはなりません。そういう想像をすることはできますが、課税するのであれば課税要件事実たる証拠が必要となるのは当然のことです。
相続人がその保険料の出所について、明確に答えられなかったとしても、20年も以前のことであり、記憶があいまいだったり忘れてしまったということがあってもそれは自然なことです。
仮に相続人が高齢になっていたり、病気や事故などがもとで記憶があやふやになっていたりしたらどうでしょうか。
そこはやはり、被相続人が保険料を負担したという事実、たとえば被相続人名義の預金から出金や振り込みなどの証がなければならないでしょう。
正直者がばかをみる?
ただ、金融機関の取引履歴は過去10年間しか復元することができないことから、そちらからの確認は不可能です。
となると、税務当局に残された道はひとつだけで、相続人自信に自白(ゲロ)してもらうほかありません。
となると、(真実がそうだったとして)「保険料は被相続人が負担しました」と相続人が正直に自白したら相続税が高くなり、「よく覚えていません、忘れました」ととぼけ通したら相続税が安くなるということになってしまいます。
そんな理不尽なことはないですよね。
正直者がバカをみる、課税のあり方があってはならないと私は考えています。
【きょうの料理】
spiceカレー。味噌を入れてマイルドに。


