相続税申告の分断申告とは 争続になるとありがち
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相続税専門の税理士の岡田隆行(okatakatax.com)です。 ☞ 仕事を依頼する
この呼称が性格なのかどうかはわかりませんが、国税職員(のうち資産税の職員)の間で相続税申告の「分断申告」と呼ばれる申告の形態があります。
聞いてそのとおりなのかも知れませんが、相続税の申告義務者どうしが不仲で、ひとりの被相続人の申告書が複数提出されている場合を指します。

基本は被相続人ごとに提出
相続税の申告書は基本的には税制の仕組み上、同じ被相続人から相続または遺贈により財産を取得した者は共同して、ひとつの申告書を提出する様式になっています。
税制の仕組みとは、被相続人の財産全体を把握しないと税額が算出できないようにできているからです。
ですので、ほとんどの申告は同じ被相続人ごとにひとつの申告書が提出されているのですが、よく言われる「争続」になっている相続人同士からは複数の申告書が提出されることがあります。
たとえば、夫が亡くなって、相続人が妻と長男、次男、長女だった場合に、妻と長女でひとつの申告書、長男と次男でひとつの申告書とふたつの申告書が提出される場合です。
同じ被相続人の相続税の申告書が複数提出される場合、相続財産の総額にずれがあることは珍しくありません。
複数の申告ごとに別々の税理士が関与している場合には、必ずといっていいほど数字にずれがあります。
申告額のずれは是正される?
相続税の基礎控除が引下げられた(増税された)のは平成27年分からです。基礎控除額の引き下げによって、相続税がかかる人はおおむね倍増しました。
それがきっかけになったのかどうかは明らかではありませんが、以前は分断申告の申告書ごとの財産額のずれは、税務調査によって是正されていたのが、どうもされなくなったようです。
国税局の資産課税課には、高松国税局管内全体を広域調査する調査専担の人員が配置されており、以前はそのチームが処理すべき案件の1項目に「分断申告」案件が含まれていたのです。
当時は、財産の総額がずれたまま放置するなんて許されない、という方針が徹底されていたようです。
そんな方針も今は昔、たとえ分断申告で、財産の総額にずれがあったとしても、必ず是正の調査を実施するということはどうもされていないようです。
おそらくは、申告件数が倍増したのですから、分断申告もその割合の分増えていると考えるのが自然です。
ところが、それを処理する人員はむしろ減っているのが実情ですから、分断申告をいちいち是正することができなくなったものと推測されます。
相続人間が揉めているから申告書が分断して提出されている訳ですから、その数字を一致させるのは、それぞれの申告書を提出した相続人に面談する必要もあり、その処理には相当の人員日数を投下する必要があります。
まさに「火中の栗を拾う」ような状況です。
そんな案件の調査に人員日数を投下したとしても、申告漏れ財産を把握できるかどうかは分かりません。
そこで、そんな面倒なことはやめてしまえ!という判断があった、のだろうと想像されます。
【きょうのお仕事】
相続税申告の至急案件の処理を。断片的な情報でとにかく期限内に申告書を提出する必要があります。
【きょうの料理】
海老のカレー。通常はカレー粉を使いますが、たまにはカレールウで。

